第56回人工知能学会分子生物情報研究会(SIG-MBI)(分子ロボティクスアメーバ班と共催)11月22日慶應日吉キャンパス

SIGMBI 2014年 11月22日(土)10:00-12:20 (慶応大学日吉キャンパス来往舎大会議室)

 
アメーバ型分子ロボットアーキテクチャの創出を目指して
小長谷明彦 (東工大)

アメーバ型ロボットは細胞サイズの巨大リポソームに分子センサ、分子アクチュエータ、分子制御回路を組み込むことで構成される。分子部品をシステムとして統合化するためには、部品間のインタフェースの策定と全体と部品とのバランスが重要となる。このような統合化技術をアーキテクチャの観点から俯瞰する。 リポソーム作製のための油中水滴エマルション遠心沈降法の標準化に向けて豊田太郎 (東大院総合文化) 様々な“分子部品”を搭載できる“分子ロボットのシャーシ(車体)”としてリポソームを作製するに当たり、油中水滴エマルション遠心沈降法は有力な手法であるが、巨大リポソームに内包する物質に合わせて最適化することが現状であり、システムとしての標準化は確立できていない。本発表では、本手法を用いたリポソーム作製の実験結果のケーススタディを通じて、標準化のためのプロセス開発を議論したい。
 

細胞運動型分子ロボットのプロトタイピング
○林真人、滝口金吾(名古屋大学大学院、理学研究科)

われわれは細胞運動を模した分子ロボットのプロトタイプとして、細胞骨格系タンパク質を封入したジャイアントリポソームの運動制御システムの開発を行っている。本講演では、アクチン-ミオシン封入型、高濃度アクチン線維封入型、微小管封入型ジャイアントリポソームの外部刺激による形態変化の特徴について紹介し、より大きな形態変化を引き起こすための具体的方策について議論する。

 
分子アメーバの構築に向けて:可動性骨格の構築
野村慎一郎 (東北大学)

我々は,様々な実現イメージのある分子ロボットの中でも単細胞運動モデルとでもいうべき分子アメーバの実現を目指して研究を行っている.天然のアメーバを直接再現するのではなく,運動分子を用いてシンプルな可動性の骨格をつくり,これを人工膜小胞内部に導入することで,運動の制御可能な微小ロボットの実現を目指す.アクチュエータとしてATPを加水分解して駆動するキネシン/微小管の分子モータを,構造として人工脂質二分子膜からなる巨大リポソームを採用する.この分子システムを基盤として,センサや回路,アクチュエータを実装してゆくことで分子アメーバ構築を行う.今回は本分子システムの基礎となる可動性の骨格のデザインとその評価について述べる.

 

SIGMBI 14:50-16:50 (慶応大学日吉キャンパス来往舎大会議室)

光誘起ペプチドナノファイバー成長システムの創製松浦和則
(鳥取大学) 

ペプチドナノファイバーの形成を光などの外部刺激により制御する分子システムは、医学や生物工学への応用のみならず、分子ロボット構築のための分子材料となりうる。我々は,beta-シート形成ペプチド(FKFEFKFE)と集合抑制部位としての一本鎖DNAを光応答性アミノ酸残基を介して繋げた新規コンジュゲートを設計・合成した。この分子にUV光を照射すると主鎖切断反応が起こり、遊離したペプチドが自己集合しナノファイバーを形成することを見出した。
 

DNA相互作用を用いた微小管集合体のモルフォロジー制御
角五彰(北大)

キネシンはアデノシン三リン酸(ATP)のエネルギーを用い,細胞骨格である微小管上を運動するモータータンパク質である。モータータンパク質 は細胞内物質輸送や筋収縮に関与しており,エネルギー変換効率が高い,遺伝子工学技術により改質が容易であるといった特徴を有する。このような特徴からナ ノサイズでの物質輸送やマイクロアクチュエータの動力源としての応用に向けた研究がなされている。またキネシンを固定したガラス基板上に微小管を固定化 し,そこへATPを加える事で滑り運動を発現させることで微小管の運動を観察する(in vitro motility assay)ことが可能である。これまでにin vitro motility assayを基盤とし,滑り運動する微小管にビオチン(Bt)とストレプトアビジン(St)による相互作用を導入することで,バンドル状,リング状,ネッ トワーク状といった微小管からなる様々な散逸構造の形成を報告してきた。これらの散逸構造はモルフォロジー特異的な運動モードを発現する。そのため散逸構 造の制御が可能となれば運動モードも自在に制御可能となる。しかし,これまで用いられてきたBt-St相互作用は制御性が低く散逸構造を相互変換すること は困難であった。そこで研究ではBt-Stの代わりに配列情報により相互作用の誘起及び強度が制御可能なDNAを用いることで微小管散逸構造の制御を目指す。

 
モータータンパク質による自己集積を利用した収縮性ファイバー(人工筋肉)の構築
平塚祐一 (北陸先端大)

モータータンパク質の一種キネシンの会合体と、そのレールタンパク質である微小管を混合すると、微小管が自発的に放射状のアスター構造をとることが知られている。我々は会合の程度を変えることで放射状とは異なる、ストレスファイバー様の微小管ネットワークを自己集積的に形成することを発見した。さらにこのファイバーを特殊な形状のマイクロチャンバー内で形成させると、長さ数ミリメートルの人工筋肉のような収縮性ファイバーが作成可能となった。