第70回 人工知能学会 分子生物情報研究会(SIG-MBI)(オープンバイオ研究会と共催)(第61回 情報処理学会 バイオ情報学研究会と連続開催)

全国的な新型コロナウィルスの発生を受けて、表題の件で開催の可否について種々協議を重ねた結果、skype等でのオンライン発表を可能にして開催することになりました。詳細は以下のページを御覧下さい。
http://bioinfo.ec.t.kanazawa-u.ac.jp/~ken/sigmbi/

日時:2020年3月13日(金) 14:00より
          14日(土) 12:00まで(予定)

場所:北陸先端科学技術大学院大学(JAIST) 知識科学研究科講義棟2F中講義室

内容:特にテーマを限りませんので、奮って御応募下さい。

初日の発表希望者は、概要を以下の様式で佐藤 (ken@t.kanazawa-u.ac.jp) までお送り下さい。

 著者(講演者に◯)、所属
 代表者の連絡先
 講演タイトル
 講演概要(数行程度)
 希望講演時間(分)

 ★ Subject: には必ず「発表希望」と御書き下さい。★

採択およびプログラム編成は世話人に御一任下さい。

昨年と同様に、今回も同じ場所で3つの研究会を連続して開催します。バイオ
情報学研究会は3月12日(木)から13日(金)にかけて、分子生物情報研究会
は3月13日(金)に、オープンバイオ研究会は3月14日(土)に開催します。
2泊すれば3つの研究会に参加でき、基礎から応用まで幅広い発表が聞けると
思いますので、奮って御参加下さい。(曜日が昨年と異りますので御注意下
さい)

オープンバイオ研究会については、詳しくは
https://github.com/open-bio-japan/website/wiki/meeting24をご参照下さい。

バイオ情報学研究会については、詳しくはhttp://www.ipsj.or.jp/kenkyukai/event/bio61.htmlをご参照下さい。

JAISTへの道程:
https://www.jaist.ac.jp/top/access/

小松空港や小松駅からJAISTへの移動について:

注)小松空港からJAISTへの直行便は廃止され、小松駅からJAISTへの便に統合されました。
 JAIST送迎車(上記URL参照)の利用を希望する方は、必ず下記の情報を佐藤までお知らせ下さい。
 宿泊申込をされる方は、通信欄に書いて頂ければ結構です。
 ・利用する日
 ・飛行機または列車の便名
 ・送迎車の便名(上記JAISTへの道程のページから辿れる送迎車運行表を参照)
 ・携帯電話の番号
 但し、送迎車1便につき先着9名までなので、満席の場合はタクシー等に乗り合わせて
 来て頂くことになります。タクシーに4人乗車すれば1人2000円程度で済みますので、
 飛行機の便が確定している方は、事前に佐藤までメールでお知らせ下さい。同じ便に乗る方
 同士で、互いに情報を交換できるように致します。

宿泊先:辰口温泉 まつさき旅館
    〒923-1245 石川県能美市辰口町3-1 tel 0761-51-3111
  注:宿泊料は約13000円です(朝夕食付き)。

宿泊の申し込みは終了しましたが、若干名なら予約可能ですので、世話人まで御連絡下さい。

研究会のみ参加(講演宿泊共になし)の場合:無料。参加登録の必要もありません。

問い合わせ先(世話人): 佐藤賢二 ken@t.kanazawa-u.ac.jp
金沢大学 理工研究域 生命理工学系

発表予定者リスト(順不同・順次追加します)
プログラム


14:00-14:15
合流する生合成代謝経路の算出

◯太田潤(岡山大学)

代謝に関して、AはB生成の原料であるという言い方をするとき、AからBに至る
linearな代謝経路が想起されるが、B分子全体が単独のA分子から生成しない場
合も多い。合流・分岐する生合成経路は一般にみられる。合流するが分岐しな
い生合成代謝経路は、EMU tracingに引き続き逆行性経路計算する方法により算
出できる。この方法の応用例を述べる。


14:15-14:35
免疫系遺伝子発現データの機械学習と選抜された遺伝子リストの評価

◯樋口千洋 (国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所)

Immnology Genome Projectで明らかにされたマウスにおける19の免疫細胞にお
ける遺伝子発現データを4種類の機械学習手法で特徴選抜し判別精度の比較を行
うと共にそれらの重なりを調べた。また、エンリッチメント解析により選抜さ
れた遺伝子リストの合理性を調べた。


14:35-14:45 休憩


14:45-15:35
SIG-MBIを振り返って

◯小長谷明彦(東京工業大学 名誉教授)

3月13日(金)に北陸先端科学技術大学院大学で開催される第70回人工知能学会
分子生物情報研究会をもって、SIG-MBIの活動を閉じることになる。第1回の
SIG-MBIは1998年4月に東大医科研で開催された。1990年代はゲノム解析の時代、
2000年代はOMICSやシステムバイオロジーが始まり、バイオ情報学が本格化した。
2010年代は、「解析のためのバイオインフォマティクス」から「設計のための
バイオインフォマティクス」へとパラダイムシフトし、分子ロボット関係の話
題を中心に議論してきた。分子ロボットは2012年から新学術領域が、2016年か
らはNEDO分子人工筋肉、2017年からはJST分子ロボット倫理が始まり、夢が形に
なってきた段階で、一つの区切りとしたい。


15:35-15:45 休憩


15:45-16:00
瀬戸内海における動物プランクトンのeDNA解析

◯川島武士(国立遺伝学研究所)

多くの海産無脊椎動物は、発生の一時期もしくは成体になってからも、浮遊性
の生活史をしめす。外洋における微小な浮遊生物の動態(dynamics)を知る方法
は、ながらくプランクトンネット等による採集に依存していたが、近年は環境
DNA(eDNA)解析による観察が可能になってきた。今回、発表者を含む臨海ハック
研究会メンバーで、日本近海域における浮遊生物動態の一端を解明することを
めざし、隣接する複数地点の採水と環境DNA比較解析を行ったので報告する。


16:00-16:15
セマンティック・ウェブ技術を用いたデータベース統合の10年と今後について

◯ 川島秀一、片山俊明(ライフサイエンス統合データベースセンター)

DBCLSとNBDCがこれまで約10年に渡って進めてきた、セマンティック・ウェブ技術を応用した、データベースを統合的に利用するための技術開発およびサービス開発について概観し、今後の展開について報告したい。


16:15-16:30
Tardigrada and Terrestrialisation: Genes, Rocks & Clocks.

◯ James Fleming (慶應義塾大学先端生命科学研究所)


16:30-16:45
見えてきたクマムシ乾眠の分子機構

◯荒川和晴(慶應義塾大学先端生命科学研究所)

2016-2017年の2種のクマムシゲノムの公開から、クマムシ乾眠の研究が世界中
に広がりつつある。我々は、比較ゲノム解析や交叉耐性のオミクス解析から網
羅的に乾眠関連遺伝子をスクリーニングし、さらにマルチオミクス解析と分子
生物学的解析によって、個別の候補の機能について詳細に解析を進めている。
本発表では、明らかになりつつあるクマムシ乾眠の分子機構について最新の知
見を紹介する。


16:45-17:00
疾患バイオバンクと前向きゲノムコホートが形成する一般集団バイオバンクによるバイオバンク・ネットワークの形成とゲノム医療の研究開発の今後の方向性について

◯荻島創一


第69回分子生物情報(SIG-MBI)研究会(慶応大学矢上キャンパス,11月23日)

人工知能学会合同研究会(参加費無料、事前登録推奨、当日受付あり)

開催日 2019年11月23日(土)10:00 - 12:00 15:00 – 17:00
開催場所 慶應義塾大学矢上キャンパス

主催 人工知能学会分子生物情報(SIG-MBI)研究会
共催 分子ロボティクス研究会
分子ロボット倫理研究会

合同研究会サイト   https://www.ai-gakkai.or.jp/sigconf/

テーマ:分子ロボティクスの医薬応用への現状と課題

プログラム

10:00-10:30 小長谷明彦 (東京工業大学)
「分子ロボティクス:今後の展望と課題」
2010年3月に分子ロボティクス研究会が発足してからほぼ10年の歳月が過ぎようとしている。2012年度には新学術領域研究「分子ロボティクス」が立ち上がり、分子ロボティクスの基礎研究は大きく広がった。その後、NEDO「分子人工筋肉」、JST「分子ロボット倫理」などの後継プロジェクトを中心に分子ロボティクスの研究は精力的に進められているが、その多くは、未だ基礎研究の段階から抜け出せていない。分子人工膵島ロボットの創生を目指した科研費プロジェクトは、目的志向を明確にした分子ロボット研究プロジェクトであり、今後の発展に期待したい。

10:30-11:00 招待講演 野口洋文 (琉球大学)
「糖尿病治療における移植・再生医療の現状と展望」
糖尿病治療における移植療法として、膵臓をそのまま移植する「膵臓移植」と膵臓から膵島を分離して移植する「膵島移植」がある。膵島移植は2004年に我々のグループが日本で臨床膵島移植を開始しており、良好な成績を収めているが、深刻なドナー不足の状況にある。ドナー不足解消のためブタ膵島を用いた「異種移植」の研究もされているが、良い成績が出ていないのが現状である。再生医療研究も活発に行われているが、インスリン分泌細胞への分化誘導法が確立されておらず、いまだ研究段階であるのが現状である。本研究会では膵島移植の現状と問題点を示すとともに、最先端の糖尿病治療研究について紹介する。

11:00-11:30 湯川 博 (名古屋大学)
「 量子ナノ光学に基づく最先端イメージング診断技術の医学応用 」
私は量子サイズ効果に基づく非常に優れた光学特性から、通信・映像分野において既に実用化されている 量子ドットや肝臓のMRI造影剤として臨床応用されている優れた磁気特性を有する磁性ナノ粒子などの 量子ナノ材料に注目し、細胞やエクソソームに対するin vivoイメージング手法の構築に取り組んできた。 本講演では、幹細胞や再生細胞に加え、膵島移植における膵島細胞、工学的な手法により開発した人工 膵島マシンに対するin vivo蛍光イメージングの最新の成果について紹介する。


11:30-12:00 池田 将 (岐阜大学)
「分子ロボット創製に向けた超分子ナノ構造体型部品の多成分化」
分子レベル、ナノスケール、マクロスケールなど各階層における、構造と性質の相関を解明し制御することは、新たな機能を有する分子ロボットの設計につながる。我々は、精密な分子設計に基づき、生体環境においても自律的に構造・機能制御される新しい超分子ナノ構造体の開発と分子ボロットの部品としての活用を目指している。本講演では、ペプチドおよび核酸からなる超分子ナノ構造体を混合した多成分化に関する最近の研究結果を紹介する。

昼休み 

15:00-15:20 川又 生吹 (東北大学)
「筒状DNAオリガミ構造によるリポソーム内外の分子拡散にむけて」
リポソームはリン脂質の二重膜(脂質二重膜)で包まれた球状の小胞であり、薬剤キャリアや細胞モデルとしての応用が期待されている。 脂質二重膜はリポソームの内外を隔てており、親水性の分子が膜を超えて拡散することを防ぐバリアとなる。
本研究では、直径が6 nm未満の分子を通すことができ、かつ分子を拡散させるタイミングを制御する機構を備えたナノ構造体の作製を目標としている。 そのために、ナノスケールの分子形状を自由に合理設計可能なDNAオリガミ技術を使い、蓋を備えた筒状ナノ構造体を設計した。 発表では、最新の実験結果について議論したい。

15:20-15:40 梅田 民樹 (神戸大学)
「リポソーム凝集体の形状と力学的性質の解析」
リン脂質が形成する脂質二分子膜小胞をリポソームと呼ぶ。近年,複数のリポソームが連結したリポソーム凝集体の作成が可能になってきた。リポソーム凝集体は脂質膜で区切られた複数のコンパートメントからなり、分子ロボットの材料として様々な応用の可能性があるが、その性質はまだ分かっていないことが多い。本講演では、膜張力と浸透圧、弾性を考慮した簡単な力学モデルを用いた形状と力学的性質の解析の試みについて報告する。

15:40-16:00 我妻 竜三 (東京工業大学)
「DNAオリガミと水クラスターの相互作用」
近年の設計ソフトウェアの登場により、1ミクロン以下の微小な構造体をDNAオリガミによって自由に作成できるようになった。しかしながら、主鎖に一塩基あたり1つの燐酸基をもつDNAオリガミは強い負電荷をもつ。我々は分子動力学シミュレーションによってこの影響について調べてきた。興味深いことにDNAオリガミの周辺には綿飴状のクラスターが覆っていることが判明した。本講演では水クラスターの発生がDNAオリガミに対して与える効果について解析した結果を紹介する。

16:00-16:20 Arif Pramudwiatmoko (Tokyo Institute of Technology)
“Creating Biomolecular 3D Object Mechanics with Spring and Particles with Virtual Reality Simulation”
The mechanics of most of biomolecular object plays important roles in the cell morphology and cellular processes. The mechanical properties of some biomolecules have already been measured in the past works. However, it is hard to obtain an intuitive understanding of physical properties of an object only by using numbers. Virtual reality (VR) technology can become the right tool to realize it. Taking advantage of the parallel processing of multi-core CPUs and GPUs, particle simulation system is able to utilize tens of thousands of particles to form biomolecular objects. We develop a new unified particle object model using springs which allows its parameters to be tuned to mimics the mechanical properties of a biomolecular object. Flexural rigidity of the object and viscosity of the solution are shown in this model.

16:20-16:40 Gregory Gutmann
“Creating a Comfortable Networked VR Experience to Enable Larger Interactive Simulations”
Our past work on interactive VR simulations enabled a hands-on experience with atomic level matter such as tubulin dimers and short DNA helix. This provided a unique and intuitive experience which is not normally possible due to the scale of atoms. Recently we have been working on scaling up the VR experience with a client and server approach. This will enable the user to interact with larger and more complex molecules, to increase the possibilities of what can be experimented with in a hands-on manner. The major challenge in this work was creating a smooth experience between the compute server and VR client. To solve this, we have utilized regression-based extrapolation methods for user motion prediction, so that we can send the client’s expected future position to the server to create an update based on. Then when this simulation update makes it back to the client it is in line with their new position, creating an experience that feels natural and responsive.

16:40-17:00 Discussion

17:00 閉会

講演募集中
  発表申込み締切     2019年9月23日
  アブストラクト締切   2019年10月31日

申込み先:
  kona @c.titech.ac.jp (空白を除いてください)
  subject欄に sigmbiで講演希望
  と記述してください。

講演者名  (複数の場合は講演者に○をつけてください)
所属
講演タイトル
講演アブストラクト (200文字程度)

第68回人工知能学会分子生物情報研究会(SIG-MBI)@JAIST,2019/3/9

第68回 人工知能学会 分子生物情報研究会(SIG-MBI)(オープンバイオ研究会と共催)(第57回 情報処理学会 バイオ情報学研究会と連続開催)

日時:2019年3月9日(土) 14:00より
         10日(日) 12:00まで(予定)

場所:北陸先端科学技術大学院大学(JAIST) 知識科学研究科講義棟2F中講義室

内容:特にテーマを限りませんので、奮って御応募下さい。

初日の発表希望者は、概要を以下の様式で佐藤 (ken@t.kanazawa-u.ac.jp) までお送り下さい。

 著者(講演者に◯)、所属
 代表者の連絡先
 講演タイトル
 講演概要(数行程度)
 希望講演時間(分)

 ★ Subject: には必ず「発表希望」と御書き下さい。★

採択およびプログラム編成は世話人に御一任下さい。

昨年と同様に、今回も同じ場所で3つの研究会を連続して開催します。バイオ
情報学研究会は3月8日(金)から9日(土)にかけて、分子生物情報研究会
は3月9日(土)に、オープンバイオ研究会は3月10日(日)に開催します。
2泊すれば3つの研究会に参加でき、基礎から応用まで幅広い発表が聞けると
思いますので、奮って御参加下さい。(開催順が昨年と異りますので御注意下
さい)

オープンバイオ研究会については、詳しくはhttps://github.com/open-bio-japan/website/wiki/meeting23をご参照下さい。

バイオ情報学研究会については、詳しくはhttp://www.ipsj.or.jp/kenkyukai/event/bio57.htmlをご参照下さい。

JAISTへの道程:
  https://www.jaist.ac.jp/top/access/

小松空港や小松駅からJAISTへの移動について:

  注)小松空港からJAISTへの直行便は廃止され、小松駅からJAISTへの便に統合されました。
 JAIST送迎車(上記URL参照)の利用を希望する方は、必ず下記の情報を佐藤までお知らせ下さい。
 宿泊申込をされる方は、通信欄に書いて頂ければ結構です。
 ・利用する日
 ・飛行機または列車の便名
 ・送迎車の便名(上記JAISTへの道程のページから辿れる送迎車運行表を参照)
 ・携帯電話の番号
 但し、送迎車1便につき先着9名までなので、満席の場合はタクシー等に乗り合わせて
 来て頂くことになります。タクシーに4人乗車すれば1人2000円程度で済みますので、
 飛行機の便が確定している方は、事前に佐藤までメールでお知らせ下さい。同じ便に乗る方
 同士で、互いに情報を交換できるように致します。

宿泊先:辰口温泉 まつさき旅館
    〒923-1245 石川県能美市辰口町3-1 tel 0761-51-3111
  注:宿泊料は約13000円です(朝夕食付き)。
  追記:3月9日の宿泊料は約16000円です(朝夕食付き)。

宿泊の申し込みは終了しましたが、若干名なら予約可能ですので、世話人まで
御連絡下さい。

研究会のみ参加(講演宿泊共になし)の場合:無料。参加登録の必要もありません。


問い合わせ先(世話人): 佐藤賢二 ken@t.kanazawa-u.ac.jp
金沢大学 理工研究域 生命理工学系

プログラム
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14:00-14:50
分子ロボット創薬への道

◯小長谷明彦(東京工業大学)

生体分子を集積化することで、システムとして動作する分子ロボットを自己組織化させることが可能となってきた。分子ロボットは生体分子から構成されているため生体との親和性が高い。本講演ではこのような特性を活かした「分子ロボット創薬」の可能性について論じる。

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14:50-15:15
“原子=人”とみてみることから垣間見える代謝ネットワークと社会的ネットワークの比喩的類似性

◯太田潤(岡山大学)

代謝ネットワークのグローバルな構造の解析がなされてきている。それらの解析は、多くの場合、代謝ネットワークを代謝産物のネットワークとみることを前提として行われている。それに対して、第65回の本研究会(昨年3月)では、代謝ネットワークを原子のネットワークとみる考え方があり得ることを紹介した。今回は、代謝ネットワークを原子のネットワークとみる考え方と同時に着想した、代謝ネットワークを社会的ネットワークと比喩的に類似するものとみる考え方を紹介する。この考え方における、代謝ネットワークと社会的ネットワークの対応関係は、1個の原子が1人の人に対応すると考えることから導かれる。社会的ネットワークがスモールワールドネットワークであるとされるときのノードとしての人と人の間の距離が原子ネットワークとしての代謝ネットワークの何に対応するかに関する考察も述べる。

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15:15-15:45
E3結合部位予測のための崩壊型ギブス・サンプラーDegSampler

◯丸山修(九州大学大学院芸術工学研究院)、松崎芙美子(九州大学生体防御医学研究所)

E3ユビキチン・リガーゼが結合する基質の部位を予測する配列モチーフを
推定する崩壊型ギブス・サンプリング・アルゴリズム DegSamplerを提案する.
DegSamplerは次の特徴を有している:
(1) アミノ酸の化学特性に基づく尤度関数を有している.
(2) モチーフ出現位置の事前分布としてタンパク質配列の各位置のdisordernessを利用する.
(3) 崩壊型であるため計算効率がよい.
36個のE3に対して計算機実験を行い既存手法よりもよい予測精度を得ている.

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15:45-16:15
クモ類網羅的シーケンシングによるクモ糸超高機能発現メカニズムの解明

○荒川和晴(慶応義塾大学先端生命科学研究所)

ImPACT鈴木プロジェクトでは、人工クモ糸による新規産業の樹立に向けて4年間
に渡り研究開発が行われた。本講演では、主に我々の研究室が担当したクモ糸
高機能発現メカニズム解明のための網羅的シーケンシングを中心に、その成果
を報告する。本プロジェクトで得られた1,000種類を超えるクモ糸を始めとした
構造タンパク配列と、250以上の構造タンパクの網羅的物性データについて、近
日中にオープンに公開する予定である。

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第67回人工知能学会分子生物情報研究会(SIG-MBI)@慶應矢上キャンパス11月23日(金)

人工知能学会合同研究会(参加費無料、事前登録推奨、当日受付あり)

開催日 11月23日(金)9:20-12:00 15:00-17:00
開催場所 慶應義塾大学矢上キャンパス

主催 人工知能学会分子生物情報(SIG-MBI)研究会
共催 分子ロボティクス研究会
分子ロボット倫理研究会

参加登録先  https://www.ai-gakkai.or.jp/sigconf/sigconf2018/registration/

テーマ:分子ロボティクスの医薬応用への可能性を探る

プログラム

9:20-10:00 分子ロボットを”Beyond the Pill”の視点から考える
小長谷明彦 (東京工業大学,情報理工学院)
近年、製薬業界では“Beyond the pill”というコンセプトが”個別化医療”や”AI創薬“と並んで今後の製薬ビジネス展開において重要なキーワードとして認識されつつある。従来型の薬開発では今後、投下資本収益率が低くなるという見通しから、情報通信技術(ICT)を活用したデジタルヘルスケアを含む革新的創薬技術へのパラダイムシフトが模索されている。現在の創薬の問題点の一つはバイオテクノロジー技術によって作られた生物学的製剤のように一部の疾患には有効であるが非常に高価な薬が増えてきていることにある。分子ロボット技術を活用することで様々な状況において適切に判断し、適切な処方をする「スマートな薬」を作ることはできないだろうか?

10:00-10:40 招待講演1:膵島移植・再生療法の現状と展望
野口洋文 (琉球大学大学院医学研究科,再生医学講座)
局所麻酔下にて膵島を注入する「膵島移植」は糖尿病に対する治療法のひとつとして実施されている。日本では2004年に我々のグループが臨床膵島移植を開始し、良好な成績を収めているが、深刻なドナー不足の状況にあり膵島移植の恩恵を受けられる患者はごく限られている。また、インスリン離脱を達成するには複数回移植が必要であり、膵臓移植よりもドナーを多く必要とする点が問題である。そのため、再生医療研究が活発に行われているが、インスリン分泌細胞への分化誘導法が確立されておらず、いまだ研究段階であるのが現状である。本研究会では膵島移植の現状と問題点を示すとともに、最先端の糖尿病治療研究について紹介する。

10:40-11:10 DNAナノテクを用いた細胞モデルの力学的制御
柳澤実穂 (東京農工大学,物理システム工学専攻)
細胞膜モデルとして汎用されるリン脂質膜小胞(リポソーム)は、その高い生体適合性ゆえに、内包した薬剤を輸送する医薬品(ドラッグデリバリーシステム)や化粧品の材料として広く汎用されてきた。しかし、従来の膜のみからなるリポソームは、膜が外部との浸透圧差等によって壊れやすく、中身が漏出しやすいという問題があった。我々は最近、DNAナノテクノロジーにより細胞骨格様の構造を膜へ付与することで力学的に補強し、壊れにくくすることに成功した。本研究会では、DNAナノ構造の付与による細胞モデルの力学的制御法について紹介する。

11:10-11:40 自律性をもった超分子ナノ構造体の創製
池田将 (岐阜大,化学・生命工学科)
分子レベル、ナノスケール、マクロスケールなど各階層における、構造と性質の相関を解明し制御することは、新たな機能を有する材料の設計につながる。我々は、特定の環境に応答する化学反応性人工有機分子部位を生体分子に組み込む精密な分子設計に基づき、生体環境においても自律的に機能制御される新しい超分子ナノ構造体の開発を目指している。本講演では、環境に応答して構造変化するペプチドおよび核酸からなる超分子構造体に関する最近の研究結果を報告する。

11:40-12:00 リポソーム膜に局在可能な機能性DNAオリガミの開発
川又生吹 (東北大学,ロボティクス専攻)
リン脂質の二重膜でできたマイクロサイズの小胞(リポソーム)は薬物キャリアとしての応用が期待されているものの、膜のバリア能が大きいため目的サイズの分子を通過させる人工の孔をあけることは困難である。
本発表では、合理設計された筒状DNAオリガミナノ構造をリポソームに局在化させ、蛍光分子をリポソーム内外へ通過させる技術を紹介する。
さらに特定条件下で薬物を放出するスマートなドラッグデリバリーのモデル系へ発展させるために、分子シグナルに応答して開閉可能な蓋を備えた機能化DNAオリガミの開発に関する最近の研究結果を報告する。

13:20-14:30 【合同企画】優秀賞記念講演(シンポジウムスペース)

15:00-15:20 ベクシル凝集体の形状の数理モデルによる解析
梅田民樹 (神戸大学,海事科学研究科)
水中で脂質が形成する袋状二分子膜をベシクルと呼ぶ。ベシクルは大きさが数十nmから数百mmで,構造や大きさが生体膜と類似していることから生体膜モデルとして注目されているとともに,薬物送達運搬体としての利用など医療面での応用例も報告されている。ベシクルは浸透圧により,また,タンパク質の作用で様々な形状変化を起こすが,その形状は原理的には膜の弾性に基づく数理モデルで説明可能と考えられている.本講演では,近年,応用面でも注目されているベシクルを連結させたベシクル凝集体に着目し,その形状の数理モデルによる解析の試みについて報告する。

15:20-15:40 DNAオリガミ全原子モデルのMDシミュレーション
我妻竜三, 小長谷明彦 (東京工業大学,情報理工学院)
本講演ではドラッグキャリアとして開発応用研究が進められ始めたDNAオリガミの全原子シミュレーションの基礎的な手法を紹介します。DNAオリガミはM13ファージの単鎖DNAに20ー30塩基のステプル配列を混合して生成するナノ構造体であり、様々なキャリア構造が試験されています。こうした構造特性の評価には従来CanDoのように剛体系モデルが使用されてきました。これに対して、われわれの開発した全原子シミュレーションでは溶媒中のイオン環境と実験観察条件に使用されているマイカ基板の存在下における高精度の分子ロボット設計と動特性の予測評価に使用することができるという特徴があります。

15:40-16:00 Experimenting with Molecular Objects in Virtual Reality
Greg Gutmann, 小長谷明彦 (東京工業大学,情報理工学院)
Alongside of the recent efforts by biologists to design molecular machines, we have been developing a virtual reality (VR) system to be used in prototyping new ideas and testing. The motivation comes from the challenges involved with directly viewing and visualizing matter at the nanometer level, and the time required for traditional simulation runs. By using our VR system, we can visualize and interact with the simulated molecular objects as if they were the size of the real-world objects that we interact with daily. In addition, parameters can be tuned live. However, there are some challenges when using physical interactions with soft matter. For example, on interaction it takes time for the users force on the object to propagate across the material. We have been testing solutions such as decreasing the time steps and using alternative methods of propagating the hands forces which will be looked at here.

16:10-16:30 Haptic Interaction for Hand Tracking 3D User Interface
Arif Pramudwiatmoko, 小長谷明彦 (東京工業大学,情報理工学院)
Hand tracking 3D user interface provides natural hand interaction with virtual objects in a computer simulation environment. We have implemented haptic rendering facilities into the hand tracking user interface. Small finger clamping and vibrating devices were attached to each finger to provide feedback when the hand touched an object in the simulation. Implemented using three different graphic frameworks, we postulated haptic feedback on molecular objects into vibration frequency, vibration amplitude, and pressure strength parameters. Our implementation has succeeded in providing a nuance to grip molecular objects in an immersive virtual reality environment.

16:30-17:00 量子ナノ材料による移植幹細胞in vivoイメージングと再生医療への貢献
湯川博 (名古屋大学,先端ナノバイオデバイス研究センター)
我々は、量子サイズ効果に基づく非常に優れた光学特性から通信・映像(4K・8Kディスプレイ)分野において既に実用化されている量子ドット(QDs)に注目し、再生医療における移植幹細胞in vivoイメージングに取り組んできた。本手法は、幹細胞や再生細胞を移植する再生医療の数多の領域に応用展開が可能であり、これまで不明であった移植後の幹細胞・再生細胞の生体内動態を明らかにしつつある。本講演では、これまで確立してきた量子ナノ材料によるiPS細胞イメージング技術に加え、最新の成果として、AMEDからの支援による再生医療実現拠点ネットワークプログラム技術開発個別課題の共同研究成果についても紹介したい。

第66回 人工知能学会 分子生物情報研究会(SIG-MBI)

2018年5月のSIG-MBI研究会を下記の通り、分子ロボティクス研究会と共催します。

一般講演(20-30分)または学生講演(10-15分)を1件募集いたしますので,是非ご応募下さい(先着優先). 多くの皆様のご参加をお待ちしています.

「分子ロボティクス研究会」2018年5月 定例研究会(東京)
主催:計測自動制御学会 分子ロボティクス調査研究会
共催:人工知能学会 分子生物情報研究会 (SIG-MBI)

日時 2018年5月26日(土)13:30-17:00
場所 東京工業大学 田町CIC(キャンパス・イノベーションセンター)
リエゾンコーナー508(A,B)
アクセス JR田町駅下車2-3分(http://www.titech.ac.jp/maps/tamachi/)
参加費 無料

世話人 堀 豊(慶應義塾大学 理工学部 物理情報工学科)
yhori@appi.keio.ac.jp

なお,研究会後,懇親会(実費有料)の開催を予定しております.
参加を希望される方は,以下の懇親会参加登録フォームから「5月17日」までにお申し込みください.
https://goo.gl/forms/tTMUGh7bkEHGGQZx1

——— 研究会プログラム(暫定) ———
「分子ロボティクス研究会」2018年5月 定例研究会(東京)
主催:計測自動制御学会 分子ロボティクス調査研究会
共催:人工知能学会 分子生物情報研究会 (SIG-MBI)

13:00-13:25 受 付
13:25-13:30 Opening remarks

13:30-14:20 特別講演
講師 宮廻 裕樹 先生
「電子線によるバーチャル電極ディスプレイを用いた分子操作技術」(仮題)

14:20-14:30 休 憩

一般講演
14:30-15:00 光山 隼史(慶應義塾大学 土居・藤原研 D2)
15:00-15:30 岡野 太治(中央大学 鈴木研 助教)

15:30-15:45 休 憩

15:45-16:15 一般講演 (20-30分程度) または 学生講演 (10-15分程度)

学生講演
16:15-16:30 小塚 太資(慶應義塾大学 内山・堀研 M1)
「細胞間分子通信により制御される細胞集団の外乱応答特性の解析」(仮題)
16:30-16:45 多田 あすか*、平谷 萌恵 (*発表者.東京農工大 川野研 M1)
「DNAコンピューティングとナノポアによる一分子操作」
16:45-17:00 林 知希 (慶應義塾大学 尾上研 M1)

17:00-      移 動
17:30-19:30 懇親会@田町駅付近
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第65回 人工知能学会 分子生物情報研究会(SIG-MBI)

第65回 人工知能学会 分子生物情報研究会(SIG-MBI)(オープンバイオ研究会と共催)(第53回 情報処理学会 バイオ情報学研究会と連続開催)

日時:2018年3月8日(木) 14:00より
9日(金) 12:00まで(予定)

場所:北陸先端科学技術大学院大学(JAIST) 知識科学研究科講義棟2F中講義室

内容:特にテーマを限りませんので、奮って御応募下さい。

初日の発表希望者は、概要を以下の様式で佐藤 (ken@t.kanazawa-u.ac.jp) までお送り下さい。

著者(講演者に◯)、所属
代表者の連絡先
講演タイトル
講演概要(数行程度)
希望講演時間(分)

★ Subject: には必ず「発表希望」と御書き下さい。★

採択およびプログラム編成は世話人に御一任下さい。

昨年と同様に、今回も同じ場所で3つの研究会を連続して開催します。分子生
物情報研究会は3月8日(木)に、オープンバイオ研究会は3月9日(金)に、
バイオ情報学研究会は3月9日(金)から10日(土)にかけて開催します。
2泊すれば3つの研究会に参加でき、基礎から応用まで幅広い発表が聞けると
思いますので、奮って御参加下さい。

オープンバイオ研究会については、詳しくはhttp://open-bio.jp/をご参照下さい。

バイオ情報学研究会については、詳しくはhttp://www.ipsj.or.jp/kenkyukai/event/bio53.htmlをご参照下さい。

JAISTへの道程:
https://www.jaist.ac.jp/top/access/

小松空港や小松駅からJAISTへの移動について:

注)小松空港からJAISTへの直行便は廃止され、小松駅からJAISTへの便に統合されました。
JAIST送迎車(上記URL参照)の利用を希望する方は、必ず下記の情報を佐藤までお知らせ下さい。
宿泊申込をされる方は、通信欄に書いて頂ければ結構です。
・利用する日
・飛行機または列車の便名
・送迎車の便名(上記JAISTへの道程のページから辿れる送迎車運行表を参照)
・携帯電話の番号
但し、送迎車1便につき先着9名までなので、満席の場合はタクシー等に乗り合わせて
来て頂くことになります。タクシーに4人乗車すれば1人2000円程度で済みますので、
飛行機の便が確定している方は、事前に佐藤までメールでお知らせ下さい。同じ便に乗る方
同士で、互いに情報を交換できるように致します。

宿泊先:辰口温泉 まつさき旅館
〒923-1245 石川県能美市辰口町3-1 tel 0761-51-3111
注:宿泊料は約13000円です(朝夕食付き)。

宿泊の申し込みは以下のURLで受け付けています。
http://bioinfo.ec.t.kanazawa-u.ac.jp/~ken/sigmbi/reserve.html
30〜40人程度のキャパシティなので、できるだけ早めに御予約下さい。
締め切りは、宿泊・講演申し込みともに3月2日(金)です(延長しました)

研究会のみ参加(講演宿泊共になし)の場合:無料。参加登録の必要もありません。

問い合わせ先(世話人): 佐藤賢二 ken@t.kanazawa-u.ac.jp
金沢大学 理工研究域 電子情報学系

発表予定者リスト(順不同・順次追加します)

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14:00-14:40
分子ロボット倫理:何故、今、ガイドライン策定を必要とするのか?

◯小長谷明彦(東京工業大学)

分子ロボティクスの研究は日進月歩であり、新学術領域研究「分子ロボティク
ス」(2012-2016)終了後も後継プロジェクトを中心に様々な技術革新が続いて
いる。分子ロボットの応用領域の一つに分子ロボット創薬や分子ロボット再生
医療が挙げられているが、生体に投与するためには「分子ロボットガイドライ
ンの策定」が不可欠である。将来的なガイドライン策定に向けた道筋について
述べる。

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14:40-15:10
新代謝経路発見のための仮想代謝ネットワーク生成について

○太田潤(岡山大学)

新酵素反応・代謝経路の候補を挙げるために、既知の酵素反応の性質を一部保
持する仮想反応を作り、それらを含む仮想代謝ネットワークで経路計算を行う
アイディアを2007年から順次発表してきた。この実現に必要な、多数の仮想反
応から実際に起こり得る反応を選択するステップにAIを使えばよいという示唆
をAPBC2018でいただいた。自ら解きたいが共有すべき課題でもあると思うので、
仮想代謝ネットワークとその分類の考え方を、そこに至った過程も含めて紹介
する。

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15:10-15:20 休憩
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15:20-15:40
マルチオミクス解析で迫る造網性蜘蛛の糸デザイン

◯河野暢明1・吉田祐貴1・藤原正幸1・中村浩之2・大利麟太郎2・篠原麻夏2・
Daniel Pedrazzoli2・冨田勝1・荒川和晴1
1:慶應義塾大学先端生命科学研究所
2:Spiber(株)

造網性の蜘蛛の中でもコガネグモ上科に属する蜘蛛は多様な性質の蜘蛛糸を場
面に合わせて使い分けており、その性質や多様性は生態学的・産業的・進化的
に沢山の興味を引きつけている。しかしながら物性の多様性と糸タンパクの組
成との関係性は未だに不明瞭であり、またその能力がクモ全体でどれほど保存
されているのかは知られていない。そこで我々はコガネグモ上科の中でも大型
で日本標準種のオニグモのゲノムを初めて整備し、transcriptomeやproteome
解析を組合わせたマルチオミクス解析による蜘蛛糸物性の関連因子を探索し、
その進化的保存性を見た。本発表ではそこで得られた蜘蛛糸遺伝子の特徴や糸
物性に関与する因子に関して紹介する。

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15:40-16:10
比較ゲノム解析による極限環境微生物の紫外線耐性関連遺伝子の網羅的探索

◯荒川和晴(慶應義塾大学先端生命科学研究所)

オゾン層形成以前の太古地球では太陽から放出される宇宙線や紫外線が降り注
ぎ、生命の地表進出を妨げる一因になっていたと考えられる。同様の環境は地
球外惑星においても普遍的であり、生命の起源や進化、また、地球外生命の探
索や進出などといったアストロバイオロジーの各論において、生命の紫外線耐
性機構は避けて通れない問題である。微生物の紫外線耐性は長年に渡り、主に
紫外線耐性菌Deinococcus radioduransの解析を通じてこの生物が持つ色素や高
いDNA修復能力の関与が示唆されてきたが、近年のノックアウト解析の結果いず
れもが否定され、現在では細胞内マンガンの酸化還元機構が有力な仮説として
提唱されている。だが、D. radioduransのみに着目した解析では比較解析が困
難である点から限界がある。そこで、我々はKocuria・Arthrobacter属の近縁な
がらも、大腸菌レベルの低い紫外線耐性からD.radioduransに匹敵するまでの高
い紫外線能力まで幅広く耐性能が分布する24株の微生物(線量300J/m2でUV-C
254 nmを照射した時の生存率が約0.001%から50%と大きく異なる)をアメリカ大
陸の砂漠から単離し、これらの全ゲノム解析によって産生する色素及びマンガ
ン代謝関連酵素が耐性に寄与している可能性を、遺伝子レベルの系統樹を用い
た決定木解析及び比較ゲノム解析によって探索した。その結果は、現状細胞内
マンガンの酸化還元仮説を支持している。

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16:10-16:30
Meta-analysis of hypoxic transcriptomes from public databases

◯坊農秀雅(情報・システム研究機構 データサイエンス共同利用基盤施設 
ライフサイエンス統合データベースセンター)

公共遺伝子発現データベース(DB)、NCBI Gene Expression OmnibusとEBI
ArrayExpressには、従来のマイクロアレイによる発現データだけでなく、次世
代シークエンサーから得られたトランスクリプトーム配列解読(RNA-seq)によ
る発現データも徐々に蓄積しつつあり、その利用価値が高まっている。
我々は、公共DB中の遺伝子発現データをメタ解析することによって、実験グルー
プや実験条件が違っていても、常酸素に比べて低酸素下で発現が変化する遺伝
子群を見出してきた。具体的には、低酸素に関係する発現データが多数登録さ
れている生物種であるヒトとマウスにおいてそれぞれ、同一のマイクロアレイ
プラットフォーム(Affymetrix GeneChip)において低酸素刺激前後のデータを
選び出し、さまざまなグループによる多様な実験条件下で遺伝子発現が変化
(発現上昇/下降)する遺伝子群の抽出を行い、生物種ごとに得られたデータ
を可視化してきた。さらに、RNA-seqによる低酸素刺激によるトランスクリプ
トームデータが公共DB中に蓄積してきたことからその検討を行い、ヒト培養細
胞のみではあるが複数の実験グループによるデータが得られた。それらに対し
て同様に発現定量し、マイクロアレイによるそれとの比較検討を行ったので、
その結果を報告する。
Ref: https://doi.org/10.1101/267310

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第64回SIGMBI: 分子ロボティクスの今後の展望について

**参加登録サイトがオープンしました** リンク先は こちら(参加費無料)

科研費新学術領域研究「分子ロボティクス」は2017年3月に成功裏に終了しました。分子ロボティクスの研究は後継プロジェクトであるNEDO「分子人工筋肉」プロジェクトや領域メンバーによる科研費基盤研究を通じて着々と進められています。人工知能学会合同研究会におけるSIGMBIセッションでは、分子ロボティクスの今後の展望について、分子ロボティクス技術の深化と共に、応用実用化に向けた研究分子ロボット倫理など様々な観点から議論します。

世話人 (小長谷明彦、東工大)

2016年11月25日(土) 慶応義塾大学 矢上キャンパス12棟102号室

午前の部 9:00-12:00  分子ロボット関連技術(一般講演セッション)

開会の辞

9:00 – 9:30 小長谷明彦 (東京工業大学情報理工学院)
「分子ロボティクスの現状と今後の展望」

DNA、微小管、分子モータなどの生体分子を組み合わせてロボットのように自律的に動作する人工物を創る、という研究は2012年から開始した新学術領域研究「分子ロボティクス」で大きく進展しました。次なる目標は分子ロボットの実用化にあります。分子ロボットは電子機械式のロボットと比べ、生体分子で構成されているため生体との親和性が高いことがその特徴の一つとなっています。分子ロボットを薬のように生体に投与するためには、技術的な問題も数多く残されていますが、倫理・法律・社会的課題についても十分な議論が必要となります。本発表では、これまでの分子ロボット研究の成果と今後の方向性について述べます。

9:30 – 10:00 豊田太郎 (東京大学大学院総合文化研究科)
「ベシクル凝集体:作製法と医用技術への展開」
水中で脂質が形成する袋状二分子膜をベシクルと呼ぶ。ベシクルは粒径が数十nmから数百mまで及ぶにも関わらず,膜厚は5 nm程度であり,極めて柔軟なカプセル型の弾性体としてのみならず,構造や大きさが生体膜と類似していることから生体膜モデルとしても注目されている。近年では,医療面において,薬物送達運搬体へのベシクルの応用例が数多く報告されるようになり,重要性は益々高まっている。ベシクルの構造や構成分子に様々な機能を付加することで,複数の外部刺激に応答できるようになったり,分子ロボティクスに代表されるような演算を介した複雑な出力を与えることが可能である。私たちは,ベシクルを連結させた凝集体に着目し,外部刺激に対するベシクル凝集体の応答を明らかにすることを通じて,このカプセルの医用技術応用を目指している。
従来,ベシクル凝集体の作製法として,ベシクルを個別に作製する過程もしくは作製後に膜分子に作用する接着因子を添加してベシクルを凝集させていた。この接着因子は,ベシクルどうしが接着したり,膜どうしが融合する過程を促進できるが,常に物理/化学条件が変動する生体中でもこの機能を保持することは難しい。最近,ベシクルの作製法として油中水滴エマルションを利用した手法が開発された。これは,ベシクルの鋳型になる水滴を油相の中で作製してから,水相へ移行させてベシクルを形成するものである。私たちはこれを応用して,予め油相中で水滴を凝集させてから移行させることで,接着因子なくベシクル凝集体を作製できる手法を確立した[1]。
これまでに,リン脂質型と両親媒性高分子型の2つのベシクル凝集体を作製し,近赤外蛍光有機色素やX線CT造影剤を内包することで,腹腔鏡手術の精度向上を目的とする組織マーカーを開発した[2]。さらにこの組織マーカーを超音波利用の手術にも対応できるよう改良を行っている [3]。本発表ではこれらを紹介し,薬剤を内包したベシクル凝集体のドラッグデリバリーキャリアへの応用の可能性について議論したい。
本研究は,千葉大学フロンティア医工学センターの林 秀樹教授,大学院医学研究院の田村 裕教授,大学院融合理工学府の藤浪真紀教授との共同研究で行われたものであり,ここで謝意を表します。
[1] 豊田太郎他,オレオサイエンス,12, 77 (2012). [2] Hayashi et al., Surg. End. 29, 1445 (2014). [3] Yahagi et al., Jpn. J. Appl. Phys. 55(7S1), 07KF21 (2016).

10:00 – 10:30 池田将 (岐阜大学大学院連合創薬医療情報研究科)
「環境を感知して形を変える分子系」
分子の形作る1分子レベル、ナノスケール、マクロスケールなど各階層での構造と性質の相関を明らかにすることは、新たな機能を有する分子性材料の設計につながる。我々は、特定の環境に応答する化学反応性人工分子部位を生体分子に組み込む精密な分子設計に基づき生体環境でも利用できる新しい分子性材料の開発を目指している。本講演では、環境に応答して構造変化するペプチドからなるナノファイバー状分子集合体(ヒドロゲル)および核酸に関する最近の結果を報告する

10:30 – 10:45 休憩

10:45 – 11:00 梅田民樹 (神戸大学 大学院海事科学研究科)
「タンパク質によるリポソームの変形の数値シミュレーション」
リポソームは脂質2分子膜でできた人工膜小胞である.細胞や細胞小器官のモデルとして広く研究されており,分子ロボットの構成要素の一つとしても注目されている.リポソームにアクチンやチューブリン等の細胞骨格タンパク質を作用させると,細胞骨格繊維が膜を押すことにより,レモン型や平べったい形,あるいは膜チューブが突出した形など,様々な形状に変化する.また,膜を開口させ、カップ型や皿型のリポソームを形成させるタンパク質も存在する.これらの形状変化は,原理的には膜の弾性に基づく理論モデルで説明可能と考えられる.本発表では,リポソームの種々の形状変化に関する数値シミュレーションを用いた研究について報告する.

11:00 – 11:15 上野豊 (産業技術総合研究所)
「超分子構造となる生体分子の計算機モデル構築手法の開発」

筋肉等の運動タンパク質はそれらの配向した構造により、分子の発生した力で運動を実現できている。特に骨格筋の研究は歴史があり、そうした超分子構造を利用した人工筋肉は挑戦的な課題である。深く理解して応用する為に、分子グラフィックスを活用して高分子重合体を組織的に配向させるモデリングソフトウェアの開発が有用と考えられる。タンパク質立体構造データベースに基づいたタンパク質体積のポリゴンモデルで分子の配列を編集する際には衝突判定が必要なため、物理演算エンジンと呼ばれる力学計算ライブラリコードを活用してプロトタイプを開発してきた。中でもソフトウェア構築ツールluxiniaおよびGeeXLabを利用した開発例について紹介する。

11:15 – 11:30 我妻竜三(東京工業大学情報理工学院)
「千万原子数スケールの分子ロボット超分子モデリング」
本講演では、超分子モデリングによってデザインされた、従来の分子モデルではみられないスケールと外見を見せる分子人工筋肉ならびにリポソーム表面の人工チャンネルの全原子モデルを紹介します。分子人工筋肉の基本ユニット、人工サルコメア原子モデルの作成においては駆動部の分子モーター(キネシン)とDNAチューブ複合体の構築が可能となりました。DNAチューブは約400ナノメートル、表面には一定間隔で36ヶ所のキネシンの接着箇所が設けられており、120度の角度で3列の放射状に並ぶように配置されています。微小管の側面にキネシン頭部が整然と並ぶ様子が原子モデルとして再現されます。また、DNAチューブとキネシン軽鎖(尾部)の結合構造の詳細が原子モデルとしてさまざまな角度から検討可能となりました。さらに、リポソーム表面における人工チャンネルへの同様の取組みについても紹介する予定です。

11:30 – 11:45 Arif Pramudwiatmoko (東京工業大学情報理工学院)
“How to Touch and Feel Biomolecules in Virtual Reality Environment”

Virtual reality can be very useful for understanding biomolecular structure better by visualizing the three-dimensional structure of the molecule. Every atoms in a molecule actually vibrates due to the force fields that interact with it, resulting in a non-fixed conformations of the molecule. We introduce the use of haptic vibration in virtual reality environment to present these motions. A touch at an atomic object will trigger a vibration feedback to haptic devices. Larger amplitude of vibration indicates a wider range of motion, giving a sense that the touched object has more freedom in motion. This will lead to a better understanding of flexibility of molecules through virtual reality experience.

11:45 – 12:00 Gutmann Greg (東京工業大学情報理工学院)
“Scalable Multi-GPU Simulation Framework for large-scale Interactive VR over Network”

As VR has slowly become more of a main stream technology there has been a demand to utilize it for immersive and interactive simulation systems. As an interactive molecular dynamics simulation would allow for more intuitive viewing and give the ability to guide experiments. However most molecular dynamics software runs take in the order of hours to months to run, which poses a great challenge. In order to reach the simulation speeds required for an interactive simulation we have developed a coarse grained multi-GPU simulation framework. The system utilizes one computer system for computation which is connected to a gamming PC for VR rendering using 10 gigabit Ethernet. We have achieved near perfect scaling when using 10 GPU; which has enabled us to simulate large scale microtubule gliding assay problems, into the tens of millions of objects, at rates suitable for VR.

午後の部 15:00-18:00  (招待講演セッション)

分子ロボットの創薬応用への可能性について

15:00 – 15:10 来賓挨拶
関根久(NEDO「次世代人工知能・ロボット中核技術開発」プロジェクトマネージャー)

15:10 – 15:40 野口洋文(琉球大学大学院医学研究科)
「糖尿病治療における膵島移植の現状と問題点」
現在、糖尿病に対する移植療法として、膵臓移植と膵島移植がある。膵島移植は、局所麻酔下にて膵臓から分離した膵島を経門脈的に注入するため、膵臓移植に比べ低侵襲である。現在までに欧米で1000例近くの移植報告がなされており、日本でも2004年より臨床膵島移植が開始されている。2011年のCollaborative Islet Transplant Registryの報告によると、欧米での膵島移植の5年インスリン離脱率は50%と膵臓単独移植の成績とほぼ同じであり、5年生存率は98%と臓器移植の成績を上回っている。しかしながら、この成績は複数回移植により達成されており、膵臓移植よりもドナーを多く必要とする点が問題として挙げられる。 発表者の野口はハーバード大学で膵島分離技術を習得したのち、京都大学所属時に膵島移植グループの主要メンバーの一人として、2004年に日本初となる心停止ドナーからの膵島移植を実施し、翌2005年には世界初となる生体膵島移植にも成功、さらに、2013年、日本初となる脳死ドナーからの膵島移植を京都大学のメンバーとともに実施した。しかしながら、本邦では心停止ドナーからの移植が18名、脳死ドナーからが9名に留まっており、脳死ドナー数をどのようにして増やすかが膵島移植の成功へのカギとなる。 脳死ドナー不足の解消には時間がかかる現状を考慮し、別の治療法を模索する動きも活発化している。再生医療研究や、血糖応答性にインスリンを分泌するインスリンポンプの開発など、世界中で競争が起こっている。本研究会では膵島移植の現状と問題点を示すとともに、最先端の糖尿病治療研究について紹介する。

15:40 – 16:10 湯川博 (名古屋大学 大学院工学研究科 生命分子工学専攻)
「量子ナノ材料によるin vivo蛍光イメージングの現状と創薬応用」
膵島移植や肝細胞移植等の細胞移植治療において、安全性と治療効果を最大限に引き出すためには移植細胞の生体内動態を正確に把握・診断する必要がある。しかし、これまでに臨床応用されている画像診断技術は組織・臓器を対象としたものがほとんどであり、細胞を対象としたイメージング診断技術の確立が求められている。 我々は、量子サイズ効果に基づく非常に優れた光学特性(超高精細、超高感度、超長寿命、省エネ、低コスト)から通信・映像(4K・8Kディスプレイ)分野において既に実用化されている量子ドットや既に肝臓のMRI造影剤として臨床応用されている優れた磁気特性を有する磁気ナノ粒子等の量子ナノ材料に注目し、移植細胞in vivo蛍光イメージング技術の構築に取り組んできた。最近では、再生医療への応用を中心に取り組み、これまで不明であった移植後の幹細胞・再生細胞の生体内動態の解明に貢献している。 本講演では、再生医療における移植幹細胞・再生細胞in vivo蛍光イメージングの最新成果に加え、量子ナノ材料によるin vivo蛍光イメージングの創薬分野への応用・発展性、殊に細胞を超える分子ロボットの創薬応用への可能性について言及したい。

16:10 – 16:40 石原司 (産業技術総合研究所)
「ついに「ロボット創薬」の時代へ:自動設計と自動合成の融合による医薬品探索の自動化」
医薬品の創出は数年に渡る歳月と幾多の試行錯誤を伴い、生産力向上は製薬産業における至上命題である。近年における機械学習の飛躍的な進化は、化合物の設計を自動化しうる。我が国の優位点である機械化技術の深化は、化合物の合成を自動化しうる。我々は、高機能化合物の創出に資する支援技術の確立に向け、ロボット創薬ー即ち、自動設計と自動合成の具現化と融合による医薬候補化合物自動探索装置ーの完成を目指している。 ・目標像:365 日24 時間稼動し、高活性化合物を自律的に探索する ・試験稼働結果:臨床試験化合物に匹敵する化合物を自動で創出した 本講演では、来るべき分子ロボティクスの創薬応用に向け、その探索の一助になりうると期待する自動探索装置の概要、および、医薬候補品探索に試験稼働して設計ならびに合成した化合物の評価結果を紹介する。 自動設計装置は、三つの機能ー合成経路・化合物設計・探索結果解析ーから構成される。起点となる化合物の合成経路を解析し、構造活性相関の探索を目的とする類縁体一群の合成に適した経路を選択する。次に、内包する論文6.5 万報が収載する200 万超の化合物の構造とその活性を情報源とし、置換基の出現頻度や構造活性相関の類似性などの自動解析にて獲得した暗黙知に基づき、新規化合物を設計する。そして、深層学習を含む機械学習による定量的構造活性相関解析を、データソースの相違を補正するデータ融合や転移学習などの高次学習系にて実行し、化合物特性を推算する。結晶解析あるいはドッキングスタディによる複合体構造が存在する場合には、これを鋳型として新規設計化合物の結合様式を推定し親和性を推算する。 自動合成装置は、自動設計装置、そして、精製装置や濃縮装置などの周辺実験機器と連携し、設計された化合物を実体化する。有史来の化学合成にて普遍的かつ不変的に実施されたバッチ反応を一新しうるフローリアクターを基幹とし、国内装置開発メーカーとの協働により、フローリアクターの弱点とされる閉塞の発生を軽減した新規開発の流路を実装する多検体合成対応型へと発展させた。 本装置の稼動により、高機能化合物探索において、人的対応に依存する探索サイクルから、自動設計と自動合成が融合した自律的探索への変革が期待される。

16:40 -17:00 休憩

17:00 – 17:30 森島圭祐 (大阪大学大学院工学研究科)
LiVEMechX・生命機械融合ウェットロボティクスが拓く超スマート社会

石油や電気の化石燃料や内燃機関等動力源に頼らず、生体や自然環境のエネルギーを取り込むことで駆動できる機械システムが実現できれば、省エネルギー効果は絶大で、IoT、AI、ヒト、自然、人工物がすべて調和した超スマートな持続可能社会を実現できる。デバイスの駆動原理が電気を用いず化学エネルギーのみによる駆動であるため、省エネルギー効果は絶大である。したがって、このような生体エネルギー変換型生命機械融合システムである、マイクロ・ナノロボット、ウェットロボティクス、分子ロボティクスといった次世代ロボットのコンセプトは、これまでのバイオナノテクノロジー、メカトロニクス、自己組織化原理、AIを統合することで、製造業だけでなく、ヘルスケア、医療、農業、海洋、環境モニタリング等、様々な産業に革新的な変化をもたらし、化学、ライフサイエンス、IT情報サービス産業を融合した、全く新しい価値を創造するビジネスモデルと新たな雇用を生み出す、バイオニック産業を創出できる。生物が発展し、進化し続けてきた超長期的な持続可能な超省エネ型ものづくりが実現でき、現在人類が直面している食料問題、人口問題、環境問題、超高齢社会問題を解決できる手段になる。このような新たな価値を創出するための方法として、生物と人工物の新しいハイブリッド化技術の確立を目指し、従来の「バイオミメティック」から「細胞・生命そのものを用いたものづくり」へのパラダイムシフトを試みてきた。生物−機械・生物−電子・生物-分子間のインターフェース技術により、様々な生物機能を人工システムに取り込むことができる。本講演では、生体のように柔らかい生命機械情報システム、ソフト&ウェットロボティクス設計論構築や医療用・環境適応マイクロマシン、組織構築、バイオアクチュエータ、ナノマシン、細胞内計測等の研究展開について紹介する。

17:30 – 18:00 吉澤剛 (大阪大学医学系研究科)
「分子ロボティクスの倫理と社会」
科学技術振興機構社会技術研究開発センター「情報技術・分子ロボティクスを対象とした議題共創のためのリアルタイム・テクノロジーアセスメントの構築」研究開発プロジェクトでは、前年度の企画調査を受け、分子ロボティクスを具体的な事例として、社会的議題に関する知見と議論の結果を現場の研究者・技術者にフィードバックする方法論について実践的研究を進めている。本発表では、メディア分析やホライズン・スキャニングを活用して抽出した分子ロボティクスに関する倫理的・法的・社会的議題を紹介するとともに、こうした議題と社会的要請について研究者が学習する機会のあり方について展望する。

閉会の辞

講演申し込み:(締切ました)

アブストラクト締切 10月25日
日本語の場合 1000字以内
英語の場合             600語以内

分子生物情報(SIG-MBI)研究会では技報は発行しておりません。ファイルにはアブストラクトと同じものをアップロードしてください。

 

 

 

平成29 年度 日本バイオインフォマティクス技術者認定試験のご案内

日本バイオインフォマティクス学会(JSBi) バイオインフォマティクス技術者認定試験の案内が来ましたので、お知らせします。

□試験日 平成29 年12 月3 日(日)
□受験資格 受験資格は問いません。
□受験料 4800 円(消費税込)

詳しくは、下記の案内をご覧ください。

H29年実施要領

 

第63回人工知能学会分子生物情報研究会(SIG-MBI)

第63回 人工知能学会 分子生物情報研究会(SIG-MBI)(オープンバイオ研究会と共催)(第49回 情報処理学会 バイオ情報学研究会(3月23日午後~24日午前)と連続開催)

日時: 平成29年3月24日(金)午後〜25日(土)午前
会場: 北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 講義棟中講義室
(〒923-1292 石川県能美市旭台1-1)
http://www.jaist.ac.jp/top/campusmap/

世話人: 佐藤賢二(金沢大学)

参加申し込みはこちらから

http://bioinfo.ec.t.kanazawa-u.ac.jp/~ken/sigmbi/
http://bioinfo.ec.t.kanazawa-u.ac.jp/~ken/sigmbi/reserve.html

 

場所:北陸先端科学技術大学院大学(JAIST) 知識科学研究科講義棟2F中講義室

内容:特にテーマを限りませんので、奮って御応募下さい。

発表希望者は、概要を以下の様式で佐藤 (ken@t.kanazawa-u.ac.jp) までお送り下さい。

著者(講演者に◯)、所属
代表者の連絡先
講演タイトル
講演概要(数行程度)
希望講演時間(分)

★ Subject: には必ず「発表希望」と御書き下さい。★

採択およびプログラム編成は世話人に御一任下さい。

 

プログラム
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14:00-14:40
新学術領域「分子ロボティクス」の成果と今後

◯小長谷明彦(東京工業大学)

感覚と知能を備えたロボットを生体分子で構築することを目標とした新学術領域「分子ロボティクス」が2017年度末に終了する。5年の歳月の中で、リポソームをベースとしたアメーバ型ロボットやDNAや微小管をゲル化したスライム型ロボットを開発し、分子ロボットの概念の実現性を実証した。第23期日本学術会議大型研究計画マスタープランにも「分子ロボティクス・イニシアティブ」が採択されるなど、新しい学術領域として広く科学界に認知された。後継プロジェクトとしてはNEDO「分子人工筋肉」ならびにJST「分子ロボット倫理」が採択されており、社会的に受容可能な分子ロボットの実用化を目指して研究を推進している。

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14:40-15:00
超高機能構造タンパク質を求めて

◯河野暢明1・藤原正幸1・中村浩之2・大利麟太郎2・冨田勝1・荒川和晴1
1. 慶應義塾大学先端生命科学研究所
2. Spiber株式会社

様々な生物が持つ構造タンパクはそれぞれの物性から工業的応用が期待されており、蜘蛛が精製する糸になどは脱石油製品である次世代素材としてバイオテクノロジーによる人工合成が多く試みられている。しかしこうしたタンパクを構成する関連因子は複雑で、多くはその正確な特徴や傾向が未知のままで、有効利用されずにいる。本講演では、内閣府の革新的研究開発推進プログラムImPACT「超高機能構造タンパク質による素材産業革命」として遂行されている本プロジェクトの概要とともに、
これまで行って来た超高機能構造タンパクの物性解析から遺伝子探索に関する結果を報告する。

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15:00-15:10 休憩

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15:10-15:30
ドゥジャルダンヤマクマムシとヨコヅナクマムシの比較ゲノム解析

◯吉田祐貴1,2, Georgios Koutsovoulos3, Dominik R. Laetsch3,4, Lewis Stevens3, Sujai Kumar3, 堀川大樹1,2, 石野響子1, 小峰栞1, 國枝武和5, 冨田勝1,2, Mark Blaxter3, 荒川和晴1,2

1 慶應義塾大学 先端生命科学研究所
2 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 先端生命学プログラム
3 Institute of Evolutionary Biology, School of Biological Sciences, University of Edinburgh
4 The James Hutton Institute
5 東京大学大学院 理学系研究科 生物科学専攻 細胞生理化学研究室

微小動物であるクマムシによって形成される緩歩動物門は,脱皮動物門の進化,極限環境への耐性,進化 における遺伝子水平伝播の役割などの議論の中心となっている.緩歩動物は形態学的解析によって,節足動物と有爪動物と姉妹群を形成する側節足動物として考えられているが,近年の分子系統解析ではこの分類が必ずしも支持されず,カンブリア紀の脱皮動物の多様性拡大の軌跡に未だ決着がついていない.また,陸生のクマムシは液体の水の喪失に伴い乾眠や凍眠を含むクリプトビオシスと呼ばれる無代謝の休眠状態に移行する事ができるが,これは液体の水の存在を前提とする細胞生理の根幹を問い直す.さらに,輪形動物を中心として脱皮動物進化における遺伝子水平伝播の役割が問題提起されているが,緩歩動物における役割については未だ議論がある.そこで,我々は乾眠能力が相対的に弱いドゥジャルダンヤマクマムシ (Hypsibius dujaridini)のゲノムをリシーケンスし,高い極限環境耐性を持つヨコヅナクマムシ (Ramazzottius varieornatus)及び他の脱皮動物門の生物とのゲノム比較および乾眠前後の発現量解析を行なった.結果,緩歩動物特有な遺伝子ファミリーの進化を見出し,対象2種のクマムシにおける乾眠能力の違いはその遺伝子発現応答の違いによって一部説明されうることが明らかとなった.遺伝子水平伝播の割合は他の後生動物同様1~3%に限定され,緩歩動物の進化において大きな役割は持たないが,わずかながら乾眠関連の遺伝子が水平伝播によって獲得された例は存在した.そして,全ゲノム分子系統解析は緩歩動物+線形動物の姉妹群を支持する一方,遺伝子欠損パターンでは緩歩動物+節足動物を支持した.本発表ではこれらの結果を紹介し,極限環境耐性を可能とする分子メカニズムと脱皮動物門内での緩歩動物の系統関係について議論する.

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15:30-15:50
質量分析データと遺伝子発現データの統合による化合物アノテーションの試み

◯川島武士(国立遺伝学研究所)

近年になり、質量分析データと遺伝子発現データのどちらについても、多様な種についての解析結果が公開され利用できるようになってきている。そこで質量分析と遺伝子発現の双方について、種、属、科、目レベルのDifferential Screeningをin silicoで行うことで、化合物とその代謝酵素の関係を明らかにすることができるのではないかと考えられる。発表者の研究は始まったところで、未知化合物や未知タンパク質についての関連を調べるには至っていないが、現在までの解析状況と問題点についてご紹介したい。

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15:50-16:10
セマンティックネットワークを活用した医薬文書理解システムの構築

◯渡邊健太(東京工業大学)、小長谷明彦(東京工業大学)

本研究では,LODを用いて単語データの収集や表記揺れの吸収を行い,人間・コンピュータが文書を理解することを補助するような医薬文書理解システムを開発した.さらに,LOD間のデータ形式の差異吸収や分岐処理を可能とし,「単語のカテゴリが病気であった場合,病気に関するLODからデータを取得する」というような高度な情報検索を実現した.本システムは,LODチャレンジ2016にてDBpedia賞を受賞している.

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16:10-16:30
RDFデータからの特徴ベクトル生成

◯川島秀一、片山俊明(ライフサイエンス統合データベースセンター)

現在、様々な生命科学データベースがRDF形式で利用できるようになってきている。例えば、NBDCとDBCLSは共同で、RDFポータルを運営しているが、そこには現在200億トリプルを越えるRDFデータが蓄積されている。このようなRDFデータから新しい知識を得る試みとして、昨年度のBiHackathonにおいて、RDFのグラフから、DeepWalkソフトウェアを用いて、直接特徴ベクトルを生成する試みが提案された。これにより、遺伝子や病気といった異なる概念に属する対象が、同じ多次元空間上のベクトルとして表現されるため、様々な応用が考えられる。我々も、この手法を、いくつかのRDFデータセットから構築されたグラフに対して適用してみたので、報告したい。


フリーディスカッション(オープンバイオと共催)

第一部

20:00-22:00

日本のバイオデータベースの在り方について

・欧米との差別化について

・今後の展望について

第二部

3月25日 JAIST

10:30-12:00

・オープンデータの活用法について

 

 

第62回 人工知能学会分子生物情報研究会 (SIG-MBI)

第62回SIGMBI: 分子ロボティクスとマテリアルインテリジェンス
協賛: SIGNAC
2016年11月12日(土) 慶応義塾大学 日吉キャンパス 来往舎

世話人: 萩谷昌己(東大)

午前セッション: 分子ロボティクスとその知能

10:00~10:30 小長谷明彦(東工大)「分子ロボティクスの現状と今後の展開について」

生体分子を用いて「知能」と「感覚」を備えたロボットを創ることは可能か?アメーバ型分子ロボットおよびスライム型分子ロボットの開発を経て、分子ロボティクスの技術的困難さと可能性が見えてきた。本講演では、新学術領域研究での成果を踏まえて、今後の課題と展望について報告する。
10:30~11:00 菅原研(東北学院大)「分子ロボティクスのの新パラダイム」

分子ロボットが機能する場は文字通り分子スケールの世界である。そこでのロボティクスはマクロなスケールでのロボティクスと本質的に異なる。本講演では、従来のマクロなスケールでのロボティクスにおける知見との対比を通して、分子ロボティクスの意義について再考する。
11:00~11:30 鈴木泰博(名大)「学習する化学反応系について」

分子ロボットの知能への応用を目指した、化学反応系の抽象モデルをもちいた学習する抽象化学反応系について新学術領域でのこれまでの研究の成果について紹介する。また、実際のDNAをもちいた自己維持的な反応系において、環境の変動に追従する反応系の構築の実験の進捗についてもあわせて紹介したい。
11:30~12:00 丸中愉太(東大)・萩谷昌己(東大)・大下福仁(奈良先端大)

「群知能を用いた経路探索による機械学習」

各種の最適化問題や学習問題において、多数の分散的なエージェントの協調による創発過程を用いて解を探索する、群知能のアプローチが有効であることが知られている。本研究では、群知能による経路探索に着目し、神経ネットワーク様のグラフ上の経路を探索することによって教師あり学習を行う問題を新たに設定し、群知能の自己安定で分散的なアルゴリズムによる解法を提示する。

午後セッション: マテリアルインテリジェンス — ものに宿る知能

14:30~15:15 堀尾喜彦(東北大)「脳型コンピュータハードウェアの動向と課題」

ムーアの法則の終焉に伴い、新しい計算原理に基づくコンピュータが切望されている。その中で、近年の新型デバイスの登場により、脳に学んだ脳型コンピュータのハードウェア実装の可能性が大きく広がっている。本講演では、脳型コンピュータハードウェアの開発動向と課題について述べる。
15:15~16:00 川又生吹(東北大)・礒川悌次郎(兵庫県立大)・Ferdinand Peper(NICT)

「計算を行うゲルオートマトンの実現にむけて」

化学反応により望みのパターンで時間・空間的に発展し、計算を行う新しい枠組みをゲルオートマトンと呼ぶ。DNAとハイドロゲルを使ったゲルオートマトンについて、実験と理論の両面から最新の成果を報告するとともに、この枠組みを用いた計算モデルについても紹介する。
休憩
16:15~17:00 中嶋浩平(京大)「Physical reservoir computing for soft robots」

本講演では、近年、提案された新規情報処理概念であるphysical reservoir computingについて紹介する。この技術は、応用されるプラットフォームの物性・動力学的特性に応じて、その固有の威力を発揮する。この技術が「やわらかいロボット」と接続するとき、その身体はきわめて効率の良い計算資源として活用されることを見る。
17:00~17:30 成瀬誠(NICT)「フォトニック知能:意思決定を実現する極限光技術の創造」

IoT、CPS、ビックデータなど、実世界とサイバー空間を束ねる考え方が叫ばれ、一方、ポスト・シリコン・コンピューティングなど新規な物理プロセスを用いた研究が活発化し、「物理や実世界」と「計算や知能」の新たな学際融合の重要性が問われている。我々は「自然知能」を提唱し、例として強化学習を物理的に解決する「フォトニック知能」を提案した。これまでに、近接場光、単一光子、レーザーカオスを用いた意思決定課題に実験的に成功した。これらの研究では、光の集積性、省エネ性、量子性、高帯域性の極限での性質が生かされている。謝辞:本研究の一部はJSPS Core-to-Coreの助成による。

17:30~18:00 金成主(NIMS)「自然知能:新たな物理的計算能力の活用」

最近,GoogleやAmazonを筆頭に多くの企業,研究所,大学で人工知能の研究開発が盛んに行われている.その一方で,我々は既存のアルゴリズム的知能を超えた新たな物理的計算能力を活用できる「自然知能」というアプローチを提唱して来た.本講演では,物理現象で知的計算をする手法について紹介し,特に,意思決定問題を解く「綱引き原理」とその発展系について詳しく説明する.